アルク

いまの自分に満足していますか?


題名

私はこうして受付からCEOになった

著者

カーリー・フィオリーナ
刊行年 2007年

著者肩書

元ヒューレット・パッカードCEO

著者の経歴

1954年 アメリカ・テキサス州生まれ
スタンフォード大学で歴史と哲学で学士
メリーランド大学でMBA取得
その後、AT&T入社し、MITのMBAエグゼクティブコース修了
AT&Tの会社分割により、ルーセントテクノロジーに転籍
1999年、HPのCEOに就任し、改革を進め、コンパックとの合併を推進
2005年、取締役会によりCEOを解任
対象読者 ・IT業界志望者、ネットワーク、通信業界志望者
 (HP、ルーセントテクノジー志望者は必読)
・MBA取得希望者、MBA取得者
・マネージャーとなり部下を束ねている人
・古き良き大企業を改革した社長の手腕、考えを知りたい人全て
章立て 1,両親こそが、最高の贈り物
2,私の人生は、私のもの
3,秘書の仕事を通じて、働く楽しさに目覚める
4,売り込みの営業電話に恐れをなす
5,初の営業現場は、ストリップ・クラブ
6,裏切り、絶望、そして障害最高の出会い
7,こちらが我が社のセックスシンボルです
8,自分の人生は、自分のモノサシで測って
9,権力を使わなければならない時
10,重要顧客を訴える
11,キャリアの途中の贅沢な寄り道
12,相手の言葉で話す
13,目的は、手段を選ぶ
14,きっかけがあれば、変わることはできる
15,100年の歴史を持つベンチャー、誕生
16,何事も最初が肝心
17,世界で最もパワフルな女性
18,ヘッドハンターからの電話
19.第一日目のとんだ洗礼
20,あの輝いていた時代は、どこに
21,HPのすべてを見直す
22,全員が変わりたいと思えるか
23,創業者一族との初顔合わせ
24,最初の成果
25,コンパック合併という選択肢
26,プロキシー・ファイト
27,統合には、緻密さが求められる
28,成果が現れた新生HP
29,パワー・ポリティクス
書評作成日時 2008/4/30


書評

・自社ジェット機で移動し、コンパックを買収し、HP Way(HPの理念)に逆らってリストラを断行するなど、力強く改革を進める「豪腕CEO」というイメージのあった(私だけか?)カーリー・フィオリーナの自伝。実際本人が語る自己像は「豪腕CEO」とはほど遠く、もっと内省的なものであった。自身のIntegrityに自身があるのだろう。それが故に良いことを書くときも、悪いことを書くときも実名で相手の評価を記載していることが多い。

・もともと経営に興味があったわけではなく、大学の専攻も歴史と哲学。「たまたま」学部卒業後に進んだロースクールがどうしても自分に合わず、辞めて秘書として働いてみたところ、ビジネスの面白さを知った、という経歴はかなり異色。日本だとこのまま秘書や管理部門としてのキャリアで終わってしまいそうだが、そこからMBAを取ってAT&Tの幹部候補生になったことで彼女の運命は変わる。

・日本でいうNTTに当たるAT&Tには、MBA卒向けの幹部候補生コースがあり、ここで配属される全ての部署で部下のハートをがっちり掴み、業績をあげることで一気に昇進を重ねる。その後、AT&Tの分社により、ルーセント・テクノロジーに移籍し、1999年には業績が低迷するHPにCEOとして招かれている。

(5つのポイント)
1,誰のためでもない自分の人生を生きる
 父母の期待に添って入学したロースクールであったが、どうしても自分に合わないと悟り、猛反対の中、辞めて、会社勤めを始める。自分のために自分の人生を生きるという強い意志の芽生え。

2,MBA取得
 日本であればいったん秘書になってしまうと、あくまで秘書という肩書きが影響し、その後猛烈なキャリアアップは期待しにくい。アメリカはMBAさえ取ってしまえば、それまでの経歴は問わず、幹部候補生のチャンスをもらうことができる(全てにおいて経歴を問わないわけではないが)。

3,MBA取得後、AT&Tへ
 MBA取得者がよく行きたがる投資銀行や戦略コンサルティング会社ではなく、官僚的な巨大企業であるAT&Tに入社。ここで実際の事業会社のビジネスにおいて成果を出し続けたことが、後にHPにCEOとして呼ばれる布石となる。

4,日和らない
 HPのCEOに就任後、これまで誰も手を付けなかったHPの強い事業部制(事業部自体が会社にようになっていて、独立性が高すぎて別会社のようになっており、無駄が多くシナジーを出せない、自分の事業部のことしか関心がない)の解体と人事交流を実施。また事実上終身雇用だったHPでリストラを実施。HP社員多くから反対を招くことであっても、会社の未来のために決断を曲げず、やり通す。
 ちなみに最後の最後で、取締役の定年制を導入し、それにより退任した取締役を、別な取締役の要望により復帰を決めてしまう、というカーリーの唯一とも言える「日和った」行動がある。これが後の解任の伏線に思える。

5,人が裏切っても自分は正直である
 業績を回復基調に乗せつつも、最後にはHPの取締役に裏切られるわけだが、自分は裏切られたものの、正々堂々と行動し、信念を曲げたわけではない、というすがすがしさが感じられる。常に正直さを持ち続けるのは、難しいだけに強みになる。